|
日常生活でのできごとや思ったこと。
|
|
|
★『花が咲く頃いた君と』/豊島ミホ
4編からなる短編集。 ひまわり、コスモス、椿、桜という花が散りばめられた4編。 「サマバケ96」は、中学3年生のユカとアンナという女の子のひと夏の友情を描いた作品。 夏や中学3年生の女の子の躍動感がひまわりと重なりました。 「コスモスと逃亡者」では、見た目は儚いけれど雑草のような逞しさが主人公たからと重なります。 「椿の葉に雪の積もる音がする」は、静けさの中にぽつんと人の想いが感じられる作品。 雪景色の中にある椿の朱色を彷彿とさせます。 「僕と桜と五つの春」は、狂気を漂わせる一途な恋心を描いた作品。 ここで描かれる桜はあっけらかんとした明るいものでなく、『桜の森の満開の下』のような美しさだと思いました。 花と共にある思い出というのがあります。 あの時近くにあの花が咲いてたなとかある花を見て突然頭の中に過去の風景が蘇ってきたり。 ★『Re‐born はじまりの一歩』/伊坂幸太郎・瀬尾まいこ・豊島ミホ・中島京子・平山瑞穂・福田栄一・宮下奈都
7人の作家によるアンソロジーです。 「よろこびの歌」/宮下奈都 特権意識の高い女の子の話だなという印象。 名のあるヴァイオリニストの母を持つ主人公が音大の付属高校の受験に失敗し普通の高校へ進学。 不本意な高校生活を退屈にやり過ごす毎日、そんな中合唱コンクールで指揮者に指名され意気込んだものの満足感のかけらもなく終わる。ところが、合唱コンクールではちっともまとまらなかったクラスメイトの歌声を彼女はマラソン大会で耳にすることに。 「あの日の二十メートル」/福田栄一 分かりやすい話でした。 大学受験に失敗して滑り止めの大学に入学したものの間もなく学校へ行かなくなった主人公克彦。毎日市民プールへ通う中、一人の老人と出会い、彼の泳ぎのコーチをすることに。老人の目標は、二十メートル泳げるようになること、その理由は昔川で溺れて亡くなった兄の存在にある。 老人の一生懸命に頑張る姿に克彦は再受験することに決める。 「ゴーストライター」/瀬尾まいこ これは『戸村飯店青春100連発』の原型となっている短編。 ほぼ『戸村飯店〜』の最初の方と同じで、兄のヘイスケが大阪を離れるところで終わり。 「コワリョーフの鼻」/中島京子 この短編は極上。とっても好ましい素敵な話でした。 ゴーゴリの『鼻』はもちろん、アル・ゴアの『不都合な真実』、ハラルト・シュテンプケという人の『鼻行類』という本が出てきます。 夫婦がこれらの本に書かれていたことなどを話題に会話を交わします。 最終的にこの会話は妻の鼻へと繋がります。 ラストでちょっとブワッと涙がこみ上げました。 ゴーゴリの『鼻』を読みたいと実家の世界文学全集のゴーゴリを手にしたら『外套』だった…。残念。 「会ったことがない女」/平山瑞穂 妖しい話でした。 人生の終盤にさしかかった男の頭に何度も巡ってくるようになった思い出。 その思い出に出てくるとある女性を男は探します。でも、その女性は出会った当時も死んでいてるという不思議な存在、その女性は一人の生きている別の女性に憑依して現れるんです。 ラストは、憑依されていた女性の孫娘が男が探し求めた女性を演じ、彼はそれを演技であることを知らず、この不可思議なできごとに片をつけることができるというものでした。 「瞬間、金色」/豊島ミホ 複雑な家庭環境にあったナナミという女の子とシンジュという普通の女の子の友情物語。 同じセーラー服を着てはしゃいだ中学時代、別々の高校に進学して再会して、大人になって…。 豊島ミホらしい作品でした。 「残り全部バケーション」/伊坂幸太郎 “残り全部バケーション”って良い言葉だな。 家族が解散する日に、父のPHSに届いた見知らぬ人からの一通のメール。 このメールに返信をしたことで一家は見知らぬ男とドライブに行きます。 メールの送信者である若い男がこの一通のメールに賭けたのはあくどい生業が足を洗うこと。 母親の秘密に登場する男と若い男があくどい生業でひっかけた男が繋がるラストにはあっぱれ。 解散することになった家族には深刻さがなくて妙なおかしみがありました。 |
|